(2022年4月1日更新)
PCB(ポリ塩化ビフェニル)は、燃えにくく絶縁性に優れた物質であることから、変圧器やコンデンサーといった電気機器の絶縁油をはじめ、橋梁の腐食防止剤、感圧式複写紙など、幅広い分野で様々な用途に使われてきました。
しかし、昭和43年のカネミ油症事件(注釈)の発生を契機に、その毒性が社会問題化し、我が国では昭和47年以降は製造や新たな使用が禁止されています。PCBは、人の健康や生活環境に被害を生ずるおそれがある物質であり、その難分解性、高蓄積性、大気や生物等を介して長距離を移動するという性質から、将来にわたり地球規模の環境汚染をもたらすものです。
昭和41年以降、世界各地の魚類や鳥類の体内からPCBが検出され、汚染が地球全体にまで及んでいることが明らかになってきました。
(注釈)カネミ油症事件とは
食用油の製造過程において熱媒体として使用されたPCBが混入し、健康被害を発症させた食中毒事件です。製造場所は福岡県北九州市小倉北区にありました。症状は、吹き出物、色素沈着、目やになどの皮膚症状のほか、全身倦怠感、しびれ感、食欲不振など多様です。こうした症状が改善するには長い時間がかかり、現在も症状が続いている方々がいます。
我が国では、既に製造されたPCBの処理として、民間主導で焼却処理施設の設置が試みられたものの操業には至らず、その処理体制の整備が著しく停滞、未処理のまま30年以上の長きにわたり保管し続けられた結果、約11,000台の変圧器・コンデンサー等が行方不明となり、環境汚染の進行が懸念される状況となりました。
その後、平成13年7月に制定されたポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法(PCB特別措置法)に基づき、平成15年4月にPCB廃棄物処理基本計画が策定され、平成28年7月を期限とする処分(無害化)が始まりました。高濃度のPCB廃棄物は、100%政府出資の中間貯蔵・環境安全事業株式会社(JESCO)を活用して拠点的広域処理施設を整備、全国5カ所(北九州、豊田、ジェスコ東京、大阪、北海道)の事業所に処理対象エリアを割当て、それぞれのエリアごとに処理を行うこととなりました。
加えて、低濃度のPCB廃棄物の焼却処理が、環境大臣認定の無害化処理施設及び都道府県市許可施設において平成22年に開始されました。
しかしながら、JESCOでの処理が想定よりも時間を要するものであったこと、これまでPCBを使用していないとされていた電気機器から微量のPCBが検出されPCB廃棄物の絶対量が増えたことなどにより、平成24年には計画的処理完了期限(注釈)が延長されることとなりました。
JESCOの事業所での高濃度PCB廃棄物の処理は、地元の理解と協力の下で進められてきたことであり、立地自治体と約束した期限を確実に達成するため、平成28年8月にはPCB特別措置法が改正され、新たに計画的処理完了期限の1年前の日を末日とする「処分期間」が設定されたところです。これにより、高濃度PCB廃棄物の実質的な処理期限が1年前倒しとなりました。
また、平成28年9月には電気事業法が改正され、現在使用中の高濃度PCB含有電気工作物は、処分期間内に廃棄、処分することが義務づけられました。「廃棄」とは、使用をやめ、廃棄物とすることをいいます。
(注釈)計画的処理完了期限とは
PCB廃棄物処理基本計画により定められたもので、全国5カ所の拠点的広域処理施設(事業所)ごとに定められています。松江市内に保管場所がある高濃度PCB廃棄物は、「北九州」の事業所が指定されており、全国5カ所のうち、最も早く処理完了期限が到来しました。
この法律は、PCBが難分解性の性状を有し、かつ、人の健康及び生活環境に係る被害を生ずるおそれがある物質であること、並びにPCB廃棄物が長期にわたり処分されていない状況にあることから、PCB廃棄物の保管、処分等について必要な規制等を行うとともに、PCB廃棄物の処理のための必要な体制を速やかに整備することにより、その確実かつ適正な処理を推進し、国民の健康の保護及び生活環境の保全を図ることを目的ととして制定されました。
PCB廃棄物を保管している事業者の方には以下の規制が課せられています。詳細は「PCB廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法の概要」のページをご覧ください。
PCB廃棄物の区分 | 濃度 | 処分期間 | 計画的処理完了期限 | 処分場所 |
---|---|---|---|---|
高濃度(大型変圧器、コンデンサー等) | 5,000mg/kg超 |
終了 (平成30年3月31日まで) |
終了 (平成31年3月31日) |
JESCO北九州事業所 |
高濃度(可燃性の汚染物等) | 100,000mg/kg超 |
終了 (令和3年3月31日まで) |
終了 (令和4年3月31日) |
JESCO北九州事業所 |
高濃度(安定器、小型コンデンサー等) | 5,000mg/kg超 |
終了 (令和3年3月31日まで) |
終了 (令和4年3月31日) |
JESCO北九州事業所 |
低濃度(可燃性の汚染物等) |
0.5mg/kg超 100,000mg/kg以下 |
令和9年3月31日まで | − |
無害化処理施設又は都道府県市許可施設 |
低濃度(上記以外) | 5,000mg/kg以下 | 令和9年3月31日まで | − |
無害化処理施設又は都道府県市許可施設 |
(注意)現在使用中のものであっても、この表の区分に従い処分することとなります。
※処分期間:PCB特別措置法に基づき、PCB廃棄物保管事業者がそのPCB廃棄物を自ら処分し、又は処分を他人に委託しなければならない期間。
定められた期間までに処理ができるよう、可能性のある機器等をお持ちの事業者の方は、計画的な確認・交換をお願いします。
基本的な確認の方法は、次のとおりです。
1.機器の情報(メーカー、製造年、型式など)を銘板等により確認する。
2.当該機器のメーカーに確認する。
3.メーカーへの確認により判別できなかったものは、分析により確認する。
確認方法に関する詳しい情報については、以下に掲載しています。
他自治体において、調査委託機関をかたった詐欺事件が発生しています。
松江市では、調査委託機関が事業所内の電気設備を調査することや金銭を要求することは絶対にありません。不審に思われた場合は、身分証をご確認ください。不審な業者の訪問や電話があった場合は、警察や環境対策課廃棄物規制係(電話:0852-55-5671)へご相談ください。
高濃度PCB廃棄物のうち、安定器、小型コンデンサー等の処分期間は終了しました。
発見された場合は、至急環境対策課廃棄物規制係(電話:0852-55-5671)にご連絡ください。
昭和52年(1977年)3月以前に建築・改修された建物に使用された業務用照明器具(業務用蛍光灯、水銀灯、低圧ナトリウム灯)にはPCBが含まれている可能性があります。該当の建物をお持ちの方は、以下の情報を参考にしてください。
小型の低圧進相コンデンサーが見つかった事例としては、以下のような機器や設備があります。
・工場等のモーターで稼働する設備
・店舗の業務用冷凍庫等の電気機器
・農家の乾燥用モーター
・揚水ポンプの配電盤等
コンデンサーを内蔵する古い電気機器をお持ちの方は、以下のチラシを参考にPCB含有の有無をご確認ください。
高濃度PCB廃棄物のうち、変圧器(トランス)、コンデンサー等の処分期間は終了しました。
発見された場合は、至急環境対策課廃棄物規制係(電話:0852-55-5671)にご連絡ください。
〈対象となる機器等〉
なお、銘板確認のため通電中の変圧器・コンデンサーに近づくと感電の恐れがあり大変危険です。必ず電気主任技術者等に依頼して確認してください。
PCB特別措置法施行後の平成14年に、本来PCBに使用していないとする電気機器等(変圧器やコンデンサー、OFケーブル等)の中に基準値を超える微量のPCBに汚染された絶縁油を含むものが多数存在することが明らかになりました。
このように非意図的にPCBで汚染されてしまった機器(微量PCB汚染廃電気機器等)及び低濃度のPCBに汚染されたと判別した廃棄物については、令和9年3月31日までに適正に処理する必要があります。
PCB汚染の可能性については、当該機器の製造メーカーへ問い合わせるか、または(一社)日本電機工業会(外部サイト)で確認してください。
確認の結果、汚染が疑われる場合は、分析によりPCB汚染の有無を確認してください。
低濃度PCB廃棄物の処理は、民間の処理業者によって行われています。低濃度PCB廃棄物が見つかったら、これらの事業者に委託して処理してください。
環境省ホームページ(廃棄物処理法に基づく無害化処理認定施設)(外部サイト)
令和9年3月31日までに処分を委託せずに低濃度PCB廃棄物を保有している場合は、PCB特別措置法に基づく改善命令(注釈)の対象となります。
(注釈)PCB特別措置法に基づく改善命令とは
当該保管事業者に対し、期限を定めて、ポリ塩化ビフェニル廃棄物の処分その他必要な措置を講ずべきことが命じられることになります。改善命令を受けても処分しなかった場合、3年以下の懲役若しくは1,000万円以下の罰金、又は併科される場合があります。
「届出様式」のページをご覧ください。
PCB廃棄物は廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号。以下「廃棄物処理法」という。)に規定する特別管理産業廃棄物に該当し、保管する場合は同法に規定する保管基準を遵守する必要があります。
また、同法に基づき特別管理産業廃棄物管理責任者を置く必要があります。
詳細は「PCB廃棄物の保管について」のページをご覧ください。
PCB廃棄物の運搬を委託する場合は、廃棄物処理法に基づく特別管理産業廃棄物収集運搬業者へ委託する必要があります。
PCB廃棄物の適正な処理を計画的に推進するため、国は処理施設の整備の方針や処理体制の整備の方向等について「PCB廃棄物処理基本計画」を定めています。
松江市内で保管されている高濃度PCB及びPCB汚染物等は、中国地区、四国地区、九州・沖縄地区の高濃度PCB廃棄物と併せて、中間貯蔵・環境安全事業株式会社(JESCO)が北九州市に整備した施設で、低濃度PCB汚染廃電気機器等については、当該機器等の無害化処理について環境大臣の認定を受けた事業所等で処理を行うこととなっています。
詳細は「PCB廃棄物の処理について」のページをご覧ください。
ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法第7条に基づき、島根県は「島根県ポリ塩化ビフェニル廃棄物処理計画」を策定しています。詳細については、島根県「PCB廃棄物処理」(外部サイト)のページをご覧ください。